LLFP リレーエッセイ

  西山事件から32年〜NHK事件との類似                 H.K

  沖縄返還の際、米軍基地が縮小され住民が安心して生活できるようになるという政府発表が虚偽であり、 実は米軍基地がそのまま維持されることを予測させるような密約 (具体的には、 アメリカが支払うべき軍用地復元補償400万ドルを、日本側が肩代わりする密約) があったという情報を入手した毎日新聞西山記者が、国家公務員法違反で有罪判決を下された西山事件。 個人的には事件当時は小学生であり、西山事件のことは大学生になってから学んだ。

  西山記者の得た情報は本来、世紀のスクープとなるべきものであった。 しかし、西山記者と女性事務官との関係がクローズアップされ、 最大の本質である 「米軍基地の将来」 についての議論が吹き飛んでしまった。

  その構造は、今年初めのNHKに対する政治家の圧力を朝日新聞が報じたケースと酷似しているように思う。 本来、あの朝日の記事を契機として、政治家が報道機関に圧力をかけたことについて真摯に反省をするべきであったが、 無断録音などの取材手法の問題にすり替えられてしまい、政治家は全く反省していない。 そればかりか、必死に取材をした記者に対し、反省を迫る声が大きくなっていった。

  二つの事件で、だれが得をしたかは明白である。
  西山氏は言う。 「メディアの理想的な姿は、市民の代表として、市民的自由の代表者として権力と対峙し、 そして常に下からの要求を突きつけながら、権力の独走をチェックしていくものであるはずです。 それが日本には実態としてなかったのです」

  32年後のいま、メディアの権力チェック機能はさらに失われつつあるというほかない。
  西山記者は、密約の存在がアメリカ公文書館の機密指定解除に伴い明らかとなったことを受けて、 今年4月、損害賠償と謝罪を求めて、国を提訴した。司法府の存在意義が問われる裁判となりそうだ。